野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
3. 主な果物の生理機能
q. イチジク
イチジク(Ficus carica)はクワ科に属する果樹で、花や果実の付き方で大きく4系統に分類されます。日本で栽培されている品種は、花粉が受粉しなくても果実が発育する普通系に属し、夏と秋に年2回収穫できる品種が中心です。イチジクは生食する以外には、貯蔵性が良くないことからドライフルーツとしての利用も多く、菓子の材料やワインのおつまみとして食されます。
イチジクは果皮色が黄緑色、黄色、褐色、赤色、紫色、黒色と品種により様々で、果肉色も黄色いもの、赤色の薄いものから濃いものまで様々です。イチジクの果皮や果肉の色はアントシアニンの含量に影響されます。アントシアニンの主たる成分はシアニジンの配糖体であるシアニジン-3-O-ルチノシド(シアニジン-3-O-ラムノグルコシド)です。アントシアニンの含量が高いほど抗酸化活性が高い傾向があります 1)。
イチジクにはカロテノイドも含まれています。最も多いのがリコペンで、これ以外にルテイン、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチンが存在します。含量は緑黄色野菜やカンキツ類のように高濃度ではありませんが、イチジクは血液中に見出される主要なカロテノイドの全てを含むのが特徴的です 2)。
イチジクの水抽出物と熱水可溶性多糖に抗酸化活性があり、活性は熱水可溶性多糖の方が高いことが報告されています。さらに、マウスに熱水可溶性多糖を体重1kgあたり500mg投与したところ、作用機作は未解明ですが、免疫作用の指標となる血清中ヘモリシン濃度の上昇を確認し、イチジク由来の多糖類が免疫機能に影響を与える可能性が動物レベルで示されています 3)。