野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
3. 主な果物の生理機能
o. メロン
マスクメロンとも呼ばれる温室メロンが主流ですが、夕張メロンのような赤肉ネットメロンや、プリンスなどのネットの無いメロンもあり、バラエティー豊かです。メロンの栄養・機能性成分として注目されるのは、果肉がオレンジ色の赤肉メロンのβ-カロテンです。緑黄色野菜の基準であるβ-カロテン含量は可食部100g当たり600μg以上であり、赤肉メロンにはその値をはるかに上回るβ-カロテン(100g中3600μg)が含まれています 1)。 β-カロテンは、体内で効率よくビタミンAに変換されるカロテノイドで、プロビタミンAと呼ばれています。また、β-カロテンなどのカロテノイドは一重項酸素という活性酸素を捕捉する作用により抗酸化性を示すことが知られており、それらの摂取は活性酸素が関与する様々な疾病(動脈硬化、がん、糖尿病など)のリスクを低減できる可能性が示唆されています 2), 3)。
赤肉カンタループと無ネットで果肉が緑色のハネジューをかけ合わせて作られた赤肉ハネデューメロンは、腸内細菌による表面汚染を受けやすいネットマスクメロンに代わりうる可能性がある新しい品種です。その果肉の各種成分を部位別に分析した報告があり、β-カロテンやミネラルなどの栄養・機能性成分の良い供給源であることがわかっています 4)。
果物に含まれるポリフェノール類の含量および抗酸化活性を評価した研究によると、ハネデューメロンのポリフェノール含量は多くないものの、メロンポリフェノールの抗酸化活性は比較的高いという結果が得られています 5)。 また、メロンは活性酸素の一種である過酸化水素に対する捕捉活性の高い果物であり、過酸化脂質ラジカル、ヒドロキシラジカル(OH)、次亜塩素酸のような活性酸素の優れたスカベンジャーでもあります 6)。 スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性の高いカンタループメロンは抗酸化性や抗炎症性も高いことから、メロンの抗酸化性および抗炎症性にはSOD活性が密接に関係していることが示されています 7)。 メロンそのものの摂取と疾病発生率との関係を調べた疫学研究例は少ないですが、メロンの摂取が胆嚢がんの予防効果を示すことが報告されています 8)。
メロンにはカリウムが可食部100g当たり340〜350gと豊富に含まれています 1)。カリウムは体内の余分な塩分を排泄する作用があり、高血圧や腎機能障害の予防に役立つ重要なミネラルです。また、マスクメロンにはγ-アミノ酪酸(ギャバ)が豊富な「ギャバロン茶」よりも多量のγ-アミノ酪酸が含まれることが報告されています 9)。 γ-アミノ酪酸には血管中枢の働きを抑制し、血圧を下げる作用があることが知られています 10)。 この点からも、メロンは高血圧の予防に良い果物であると言えます。
メロンはまた、血小板の凝集を抑制する作用が強いことが明らかにされています 11)。 野菜・果物の血小板凝集阻害活性の強さを抗血栓点として点数化した研究において、マスクメロンやプリンスメロンは上位から2番目のグループ(200点以上)に分類されました 12)。 これらの報告から、メロンには脳血栓や心筋梗塞などの予防効果を期待できると考えられています。
メロンを摂取すると30分以内にヒト血漿中での活性酸素の生成が効果的に抑えられることがわかり、そのような抗酸化作用によって酸化ストレスに起因する傷害を低減できる可能性が示唆されています 13)。 スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)高含量メロンの抽出物について、動脈硬化などの酸化ストレスによる疾病の予防に効果があるかを高脂肪食ハムスターで調べた研究があります 14), 15)。 この抽出物の投与量が多いほど中性脂質、肝臓スーパーオキシド、脂質・タンパク質の酸化生成物の減少、アディポネクチンの増加などが見られました。その結果、肝臓脂質が著しく減少し、高脂質食によって引き起こされる脂肪性肝炎が完全に抑えられました。さらに、このメロン抽出物は血漿コレステロールや非HDLコレステロールの低下、血中及び肝臓のSOD活性の誘導などの効果もあったことから、この抽出物の継続摂取は動脈硬化や脂肪肝の予防に有効である可能性が示されています。また、Nakajimaらは、メロンSOD抽出物が脳の抗酸化的防御を促進し、ストレスによって起こる空間記憶の機能障害を防げることを示唆する研究論文を出しています 16)。