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野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向

3. 主な果物の生理機能

e. モモ

もも モモにはビタミン以外にもナイアシンや食物繊維が豊富に含まれています。ナイアシンは生体内の酸化還元反応に関与しており、欠乏するとペラグラ(皮膚障害、消化器障害、精神神経障害を起こす病気)になります。また、水溶性食物繊維であるペクチンも多く含んでおり、コレステロール正常化作用や腸内細菌叢改善作用があります。また最近、モモを含むリンゴやオレンジなど9種類の果実ジュースについて、これら果実を摂取した後の血清抗酸化能をヒトで検討した結果が報告されています。その結果、ナシ以外の果実では摂取後90分まで血清抗酸化能が維持されたとしています 1)

また興味深い研究として、Leeらはモモのエタノール抽出物がシスプラチン誘発性の肝障害を抑制することを報告しています 2) 。シスプラチンは抗ガン剤として広く用いられていますが、ラジカルを発生するためにその副作用として肝機能障害が問題となります。モモ抽出物を投与したマウスでは肝機能障害の指標となる血中トランスアミナーゼ値や過酸化脂質の上昇を抑制したとしています。このことからシスプラチによる化学療法を受けているがん患者の肝臓保護にモモが有効かもしれないと述べています。またモモの水抽出物をラットに投与すると脳でのコリンエステラーゼ活性が阻害され、アルツハイマー型認知症の治療に有効かもしれないとする報告もあります 3)

また最近、疫学研究の結果も報告されました。果物・野菜の摂取と頭頸部扁平上皮がんとの関連について約49万人を対象に調べた大規模な米国の疫学調査では、モモを含むリンゴやナシ等のバラ科果物の摂取量が最も多いグループではリスクが0.6まで低下していました 4) 。調査対象者が最も高頻度に摂取しているバラ科の果物ではリンゴが最も多いですが大きいですが、トータルとして果物・野菜を多く摂取することが重要と述べています。最近では幾つかの培養がん細胞を用いた実験においても、モモエキスにがん細胞の増殖抑制効果認められました。これらの作用はモモエキス中のポリフェノール画分に強く認められましたが、アントシアニン以外のポリフェノール物質が関与しているものと考えられています 5) 。最近、Norattoらは乳がん樹立細胞を用いた実験から、モモエキスの中でも特にフラボノイド画分から得られたケルセチン-3β-グルコシドに強い活性を見出しています 6)

(文責 杉浦 実)


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