疫学研究でみる野菜・果物摂取と健康の関係
2.果物摂取と健康の関係
- a.がん
- 1997年に発表された「食物、栄養とがん予防:国際的な展望」では、それまでの果物とがんに関する多くの疫学研究の成果に基づき、果物摂取は「確実」にがん予防に役に立つとされています。しかし、近年大規模疫学研究の結果発表が続いていますが、果物摂取の効果が明確ではない例が増えてきました。そこで、果物はがん予防に役立っている「可能性がある」という、従来より1ランク下げた評価が一般的となっています。ただし、肺がんと膀胱がんは例外で、果物が予防に役立つとする研究事例が多く報告されています。特にβ−クリプトキサンチン高摂取者は発がんリスクの低下を認める例が多くなっています。
- b.循環器系疾患
- 心臓病、脳卒中は、日本人の死因で、がんについで第2,3位を占めています。アメリカなどで行われた追跡調査(疫学調査)によると果物をたくさん摂取していると脳卒中や心臓病での死亡リスクが減少すると報告されています。
- c.糖尿病
- 果物には果糖が比較的多く含まれ、その甘み故に肥満や高脂血症・糖尿病には良くないと捉えられることが多いですが、通常の食生活において摂取するレベルでは問題の無いことが明らかにされています。一方、近年の疫学研究では、果物も野菜と同じように糖尿病の予防に有効かもしれないとする研究結果が報告されています。
- d.認知症
- わが国では、近年、アルツハイマー型認知症が多くなってきています。オランダで行われた追跡調査(疫学調査)の結果、果物に豊富に含まれているビタミンC、E、葉酸に予防効果が高いことが分かりました。脳科学の研究は、近年、急速に発展していますが、不明な点が多いのも確かです。とはいえ、アルツハイマー型認知症の予防に果物の摂取は推奨されて良いと考えられています。
- e.骨の健康
- 人の身体を支えている骨の量は、年を経るに従い自然と減ってきますが、食生活の改善により抑制できます。カルシウムを多く含む牛乳の摂取が有効とされていますが、近年、果物にも骨の量の減少を抑制する働きがあることが明らかとなりました。
- f.関節リウマチ
- g.肝臓病
- 肝臓は「沈黙の臓器」と云われるように、本人が気づかないうちに病気が進行することが多く、近年増加傾向にあります。ところがウィルス・アルコールなどが原因で起こる様々なタイプの肝臓疾患に酸化ストレスが関わっていることが近年明らかになり、ビタミン・カロテノイドが豊富な果物・野菜の摂取は正常な肝機能維持のために有効ではないかと考えられています。
- h.眼病
- 高齢化に伴い眼の生活習慣病と呼ばれる白内障などが増加しています。追跡調査(疫学調査)の結果、白内障の予防にはカロテノイドやビタミンC、Eが有効であると報告されています。
- i.メタボリックシンドローム
- j.大腸ポリープ