野菜等健康食生活協議会事務局は2013年3月31日をもちまして解散いたしました。このコンテンツは、それまでのアーガイブになります。


現在表示しているページ
HOME > 国産やさいの情報提供の推進 > 産地が保有する料理等の情報収集 ブロッコリー

国産やさいの情報提供の推進

産地が保有する料理等の情報収集の調査報告
 V.ブロッコリー(神奈川県綾瀬市)

調査および報告 農業ジャーナリスト 青山浩子

  1. 活動の背景
  2. 活動の概要
  3. 販促活動の内容
  4. 成果

1. 活動の背景

安心安全の体制を構築

綾瀬市は、神奈川県のほぼ中央に位置し、横浜への約20q、東京中心部までも40qという立地条件にある。

同市では長らく米、麦、甘しょを中心とした農業が営まれてきたが、1960年代から始まった都市化によって農地面積、農家戸数は減ってきた。60年に963戸あった農家数は、2005年には218戸まで減少した。一方で、人口は65年の約12,611人から、05年には81,758人と大幅に増えており、農産物の消費地としての可能性はますます高まっている。

同市がブロッコリーの需要拡大に乗りだしたのは06年からだ。同市は旧高座郡といわれ、「高座豚」の産地として知られているが、現市長である笠間城治郎市長が「農産物でもなにか特産品を育てたい」と提案した。そこで作付がさかんで、栄養価の高いブロッコリーをピーアールしていくことにした。同市におけるブロッコリーの栽培面積は15ヘクタール、生産量は189トン(06〜07年神奈川農林水産統計年報より)。生産量としては神奈川県内で第4位だが、出荷量では1位だという。ブロッコリーの消費拡大は「綾瀬市地場農産物消費拡大推進協議会(以下、協議会)」という組織が中心となってすすめていくことになった。

2. 活動の概要

もともと米麦の作付けがさかんだったため、平成に入った頃から「米消費推進協議会」を立ち上げて、生産振興と消費拡大を図ってきた。ところが水田面積、米の生産量ともに減少していったこともあり、95年頃に米も含めた農産物全体の消費拡大というように範囲を広げて、現在の協議会となった。

協議会の構成メンバーは綾瀬市農業会議、JAさがみ、同市商工会、同市畜産協会、同市園芸協会などの農業関係者、そして同市母親クラブ連絡協議会、綾瀬市役所管理栄養士からなっている。事務局は綾瀬市産業振興課がつとめている。

年間50万円ほどの予算が組まれ、年間を通じて農や食に関するイベントを開催・参加している。08年度の事業内容は表の通りだが、農業体験、料理教室またはコンテスト、収穫祭などのイベント開催という3本柱がおもなプログラムとなっている。

3. 販促活動の内容

市民参加型の需要拡大運動


料理コンテストの様子

ブロッコリーの消費拡大に関し、同市では高知県や埼玉県新座市のように大手量販店と連携して推進するのではなく、市民を対象とした料理コンテストの開催、およびレシピの紹介というように市民に直接訴える方法をとっている点が最大の特徴だ。

「ブロッコリーを使ったアイデア料理コンテスト」は06年に第一回を開催して以来、毎年開催している。第一回は10組、第二回には9組、16人が参加し、第3回は7組、11人が参加した。協議会のメンバーなどから構成される審査員は、“見た目”、“味”“手軽な材料で作ることができるか”“オリジナル性があるか”などのポイントから審査し、3組の入賞者を決定する。

協議会ではブロッコリーの消費拡大につながるように、と入賞者を含む全参加者の料理のレシピを公開することにした。第一回は通常の用紙をプリントしたものだったが、第二回からは差し込み式の保存できるタイプのレシピ集を作成し、希望者に無料配布している。またこのレシピは綾瀬市のホームページにおいても公開されている。

コンテストの募集、結果についてはその都度、同市の広報誌、地元のテレビ、新聞などを通じて紹介されており、保存タイプのレシピ集はこうったメディアを通じて希望者に配布するという形をとっている。第二回目にはレシピ集を500部刷ったが、「レシピがほしい」と市役所を訪ねてきたり、電話で依頼してくるなど希望者が多くまもなく在庫がなくなってしまったという。そこで第三回目では1000部刷り、現在配布をおこなっている。

若年層の参加期待しキャラクターの活用


年々親子での参加が増えている

自治体が料理教室などを開催すると、意欲的に参加するのはどちらかというと高齢者が多いという。これは綾瀬市に限ったことではない。農や食に関心を寄せ、イベント、セミナーや勉強会に参加する層は高齢者が多い。それだけ健康への関心が高いということでもあるし、時間的な余裕もある点も大きい。こういった高齢者に比べ、野菜の消費量が少ない若年層にいかに関心をもってもらうかが、野菜の需要拡大に関し無視できない課題といえる。

綾瀬市では若年層に関心をもってもらうために、「ブロッコリーを使ったアイデア料理コンテスト」にも親子での参加を歓迎しており、その他の料理教室、農業体験プログラムも親子での参加を呼びかけている。綾瀬市産業振興課農政担当の石塚裕美子主事補によると「こうした呼びかけをしたところ、実際に親子での参加が増えてきた」と話す。

一方、子供たちに親しみを感じてもらうために、ブロッコリーを擬人化したキャラクター「あやっこりー」を作成し、キャラクター商品も作成した。「あやっこりー」は同市の職員がデザインを考え、市民からの公募でネーミングをつけた。

「あやっこりー」はレシピ集に登場したり、協議会が参加する収穫まつりなどでピーアールするほか、「あやっこりーピックシール」というユニークなものも作成した。これは、幼児のお弁当などを装飾する爪楊枝の先につけるシールである。「子供たちにあやっこりーのことを知ってもらう機会はないかと思っていたところ、女性の生産者にアイデアを出していただき作成した」と石塚主事補は話す。

4. 成果


ブロッコリーの食べ方の幅を
広げる役割を担っている

3回にわたる料理コンテスト、その後のレシピ集の配布によって「ブロッコリーには幅広い料理方法があることが知られ、市民の人たちにも定着したようだ」と石塚主事は話している。

また、親子での参加を呼びかけたり、料理教室中に保育サービスを提供たりすることでコンテストを始め、協議会が主催するイベントの参加者の年齢層が徐々にではあるが若くなってきているという。

第一回から三回までのレシピを見ると、ブロッコリーの寿司、ブロッコリーのふりかけ、「ポテッコリー(ブロッコリーをポテトサラダで包んだコロッケ)」といったアイデア料理から、蒸しパン、かりんとう、マフィンといったお菓子にもブロッコリーが使われており、応用範囲は広い。ゆでたブロッコリーにチョコレートをディップするという斬新なレシピ「チョッコリー」も掲載されている。埼玉県新座市のにんじんレシピで重点がおかれた「手軽に作れる」とは異なっており、手の込んだ料理も多く、いかにも「親子で作ったら楽しいだろう」と思われるものが多かった。逆に、料理が苦手は人にも振り向いてもらうには、もう少し手軽に作れる料理レシピの開発が必要かもしれない。石塚主事も「料理に関心のある人、食への意識の高い人には知られてきたが、そうではない人にも関心を持ってもらうかがこれからの課題」と話している。

なお、農業関係者と消費者で構成する協議会が、複数年にわたってブロッコリーの消費拡大に取り組んできたが、地元の量販店やスーパーにこの動きが波及するところまではいっていないという。同市には生産者やJAが主体となって運営する直売所は多数あるが、量販店で「地場野菜コーナー」が設置されている店舗はまだないという。このため、地元の農業関係者と量販店が連携して、レシピを配布したり、試食宣伝をするといった取り組みはおこなわれていない。協議会で複数年にわたるコンテストの開催、レシピの作成、キャラクターの開発を始め、さまざまな取り組みをしているだけに、今後地元量販店と連携が生まれれば、より多くの消費者にブロッコリーの食べ方が知られるだろう。

参考資料:神奈川県綾瀬市「農業の概要」

添付資料:ブロッコリーを使ったアイデア料理レシピ集 (PDF: 1,580KB)

添付資料:あやっこりーピック型紙シール (PDF:54KB)


↑ PageTopへ ↑

Copyright(c) v350f200.com All Rights Reserved.